近年、リモートワークやモバイル端末の活用が加速する中、外出先や自宅からでも社内システムに安全にアクセスできる環境整備は急務となっています。そこで注目されているのが「モバイル閉域接続」です。企業のデータを守りながら、業務効率を向上させる手段として、多くの企業が導入を検討しています。本記事では、モバイル閉域接続の仕組みやメリット、具体的な設定方法まで、論理的かつ分かりやすく解説します。
モバイル閉域接続とは?
モバイル閉域接続とは、通信キャリアが提供する専用の閉域網(プライベートネットワーク)を用いて、企業のネットワークへ直接安全にアクセスできる仕組みのことです。インターネットを介さずに接続することで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。以下では、その概要や従来のVPNとの違いを詳しく見ていきましょう。
モバイル閉域接続の概要
モバイル閉域接続では、通信キャリアの基地局と企業の閉域網を専用回線で直結しているため、外部からの干渉を最小化できます。例えば、外出先でモバイル端末を使い社内システムにアクセスする場合でも、インターネットを経由しないため高いセキュリティを確保できます。また、通信の安定性が高いのも大きな特徴です。
VPNとの違い
VPN(仮想プライベートネットワーク)は、インターネットを暗号化して安全な通信を行う仕組みです。一方、モバイル閉域接続ではキャリア側の閉域網を使うため、基本的にインターネットを経由しません。これにより、VPNに比べて通信の遅延や不正アクセスリスクがさらに抑えられる場合があります。運用コストや管理工数の面でも異なるため、企業の規模や要件に合わせて比較検討が必要です。
モバイル閉域接続の導入メリット
モバイル閉域接続を導入することで得られるメリットは多岐にわたります。ここでは特に重要な三つのメリットをピックアップし、企業にとっての導入価値を考察します。
セキュリティ強化
インターネットを介さない閉域網を利用できるため、外部からの攻撃やデータ盗聴のリスクを大幅に低減できます。機密情報を扱う企業にとっては、VPNよりさらに一段高いレベルのセキュリティを確保できる点が大きな魅力です。
コスト削減
VPN環境を構築・維持する場合、専用装置や運用コストがかさむケースがあります。モバイル閉域接続はキャリアの既存インフラを活用できるため、大規模設備が不要な分、初期投資やランニングコストを抑えやすいというメリットがあります。
業務効率の向上
外出先や在宅勤務からでも安全かつスムーズに社内システムへアクセスできるため、リモートワークの生産性向上や商談のスピードアップに寄与します。場所を問わずにリアルタイムな情報共有ができることで、意思決定の迅速化やサービス向上が期待できます。
モバイル閉域接続の利用方法
ここでは、キャリア選定から運用開始まで、モバイル閉域接続を活用するための全体的な流れを解説します。自社の導入計画の大枠をイメージするのに役立ててください。
利用の流れ
導入開始から運用まで、企業がどのようにモバイル閉域接続を進めるか、その手順を整理してご紹介します。各ステップのポイントを押さえることで、導入時のトラブルや運用コストを最小限に抑えることができます。
- 通信キャリア・サービスの選定
自社の必要とするセキュリティレベルや通信量、利用場所に応じて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど各社のサービスを比較・検討します。 - 導入計画の策定
ネットワーク構成やセキュリティポリシーを踏まえ、導入規模とスケジュール、予算を決定します。 - 契約・機器の準備
キャリアとの契約を交わし、専用ルータやSIMカードなどを手配します。必要なライセンスの取得も同時に行います。 - ネットワーク設定
閉域接続用の設定を行い、社内LANとキャリア網をつないでいきます。セキュリティ要件を細部まで確認することが重要です。 - テスト運用
一部のユーザや拠点で試験運用を行い、問題がないか検証します。 - 本番運用開始
全社展開を行い、利用者へマニュアルやガイドラインを提供します。
対応している通信キャリア
主要な通信キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)は、いずれもモバイル閉域接続サービスを提供しています。サービスの選び方としては、利用エリアの広さやサポート体制、料金プラン、連携できるネットワーク機能などを比較検討するのがポイントです。特に、全国規模で拠点や社員が分散している企業は、サービスカバレッジの広さやサポート窓口の充実度を重視するとよいでしょう。
モバイル閉域接続の設定手順
ここでは、モバイル閉域接続を実際に構築・設定する際に必要な手順を詳しく解説します。導入前に把握しておくべきポイントを整理しておくことで、スムーズな立ち上げと安全性の高い運用が可能になります。
必要な機器とサービス
具体的な設定に取りかかる前に、まずはモバイル閉域接続に必須となる機器や関連サービスを確認しましょう。事前に必要なものを明確にしておくことで、導入後のトラブルや追加コストを最小限に抑えることができます。
- 閉域接続対応ルータやゲートウェイ
キャリアの閉域網と社内ネットワークをつなぐために必要。貸与やレンタルが可能なプランもあります。 - 専用SIMカード
モバイル閉域接続専用のSIMカードを必要台数分用意します。 - 認証システム(ID管理・MFAなど)
多要素認証を含む厳格な認証基盤を導入することで、セキュリティレベルをさらに引き上げられます。
設定の具体的なステップ
ここからは、モバイル閉域接続の代表的な設定手順を順を追ってご紹介します。実際の作業では、キャリアによるマニュアルや管理ツールも参照しながら進めると、よりスムーズに設定が進められるでしょう。
- キャリアサービスの契約
閉域接続対応プランを契約し、管理ポータルから必要な情報を取得します。 - ルータ・ゲートウェイの初期設定
Web管理画面にアクセスして、LAN側のIPアドレス設定やDHCPの有効化など、基本設定を行います。- スクリーンショット例:ルータのログイン画面やネットワーク設定画面
- 閉域網への接続設定
キャリア側から提供されるAPNや認証情報を入力し、モバイル回線を通じて閉域網に接続できるようにします。- スクリーンショット例:APN設定を入力する画面
- ファイアウォール・アクセス制御リストの設定
必要最小限の通信だけを許可するよう、IPアドレスやポート番号を指定し、外部からの不正アクセスをブロックします。- スクリーンショット例:アクセス制御ルールを設定する画面
- ユーザ認証・権限管理
Active Directoryなどを利用して利用者を一元管理し、権限を割り当てることで、誤ったアクセスや情報流出を防ぎます。- スクリーンショット例:ユーザごとにアクセス権限を付与する画面
- 動作確認と運用開始
モバイル端末から正常に社内システムへアクセスできるかテストを行い、問題がなければ本番運用へ移行します。
FAQ
ここでは、モバイル閉域接続に関してよく寄せられる質問にまとめてお答えします。
Q1:モバイル閉域接続の費用はどのくらいかかる?
A:規模や利用データ量によって大きく異なります。主に月額の通信費用とルータレンタル費、追加のセキュリティサービス利用料などが発生します。複数キャリアから見積りを取り、比較することをおすすめします。
Q2:VPNとどちらを選ぶべき?
A:企業の環境や要件によって異なります。既存のVPNシステムが充実している場合はVPNを継続利用することも多いですが、モバイル閉域接続の方が通信の安定性・セキュリティ面で優位性があるケースもあります。費用対効果や運用コストを総合的に検討してください。
Q3:設定が難しい場合のサポートは?
A:キャリアやシステムインテグレーターが設定支援や運用サポートを提供しています。ネットワーク全体の見直しやセキュリティポリシー策定を行う場合は、コンサルタントに依頼するとスムーズです。
まとめ
モバイル閉域接続は、リモートワーク時代の新たなネットワークインフラとして注目を集めています。インターネットを経由しない高セキュリティ環境を手軽に構築できるうえ、VPNと比較して運用管理コストの削減も期待できます。さらに、外出先でも社内システムに高速かつ安全にアクセスできることで、業務効率や顧客対応力の向上につながります。
企業にとっての重要なポイントは、導入前にしっかりと要件を整理し、キャリアや機器の選定を慎重に行うことです。本記事で紹介した導入メリットや設定手順を参考に、自社環境に最適なモバイル閉域接続の運用を検討してみてください。